星々の軛

人生の編集権を誰にも明け渡さない為の自己言及それ自体がどこまでも我が身を削ぎ落として行く

サバイバル

自然は、常に気取った偽の錬金術師達に対し、実験室という矮小化され弱体化され良く躾けられた都合の良い自然の模造器官を破壊するように囁く。

自然は、大昔にシステムの意味群に殺害されてしまった野蛮な内なる子供の正当性を主張し続ける。

生まれ落ちたばかりの赤子は皆、自然と不可分に同期した星の子であり、世界に忠実な完全な機械であり、自然そのものである。

星々と土くれがランダムに付与した習性の他には、その未分化の匿名の巨大な自己を規定するものは何もない完全体。

その完全性を切り刻み、縫合し、変形し、他者の魂が混ぜ合わされ、完全性の消失と弱さの極点に完成したそのキメラ体が、共同体の内部においては完全体として賞賛され、晴れて人間が出来上がる。

重力の安らかな揺り籠の中に眠り、自然のダンスに身を委ねる安楽から引き摺り下ろされ、意味の牢獄に放り込まれた瞬間、分離の苦痛が自我の影を生成する。それが”人間”の誕生の瞬間であり、これが、出産に次ぐ二度目の生である。

そして大抵は、システムへの隷属状態が続く限り、内なる野蛮な子供は葬り去られたままに生物学的死が訪れる。

けれども時々、三度目の生を経験する人がいる。

勇敢にも、壮絶な痛みと流血すら厭わずに、自己に癒着し、それそのものが自己であると嘯く意味群を剥離し、遠い過去の記憶の墓場から完全なる匿名の自己を蘇生させるという大事業に命がけで挑む人。

きっとその様な人達こそが、本当は錬金術師たり得るんだろう。

あるいはシャーマンや魔女。

原始共同体時代からずっと。

その様な戦士達こそが、無意識的な社会適応という弱さの中にいる大多数の共同体の成員達を外なる自然の脅威から守ってきた、柔軟かつ堅牢な垣根の存在。

そんな類稀な人達が、現代にもきっといる筈。いや寧ろいなきゃだめ。